KARUIZAWA RESORT HOUSE
森に住むということ”の
意味の変容
人為と自然の絶妙の関係性
そもそも“都市”は、すべて人間の考える通りに制御することを目的にした場所。土はすべて舗装し、川や海岸はすべてコンクリートで固める。一方で“自然”は、必ずしも人間の思う通りにはならないものです。“人為と自然”あるいは“意識と自然”といってもいいかもしれませんが、そのバランスを調整する必要性が今叫ばれているのです。
歴史的に、そのバランス感覚は家の作り方でわかります。日本やアジアの昔の人々は、総じて自然と調和するような家の作り方をわきまえていました。一方、西洋発祥の近代建築は、自然に対抗して統御する考え方。テクノロジーの発達で自然を屈服させるという考え方もいまだに根強いのです。だからこそ、いま改めて共生をテーマにしたライフスタイルを模索するべきなのかもしれません。
高床式とプロポーション
1950年代、20世紀の真ん中にアメリカ西海岸に一連の若手建築家によるムーブメントがありました。“ミッドセンチュリースタイル”と呼ばれるその一連の建築群は、それまでの西洋建築とは違って、自然に対して開放的なデザインが際立っていました。実はこのデザインムーブメントの源流は、自然に対して開放と調和を旨とした、日本の旧来の建築にあると言われています。第二次大戦終了直後、若い建築家の感性は、すでに“人為と自然”のアンバランスに気が付いていたのかもしれません。デザインやモノのカタチには、理由があります。高床式も単なる思い付きでカタチが決まっているわけではなく、合理的な理由があり、だからこそ心から“美しい”と思えるのです。適度な湿度が土に保持されている森の中では特に、高床式の基礎が有効なのです。昨今の木造建築では、土にビニールを敷いて、コンクリートで“ベタ基礎”を作ることが主流ですが、これも“土”を忌み嫌う“都市化”的な考え方。“土”を残すことで、木々も元気に生きていく--。木々やそこに暮らす生き物たちとの“共生”を第一義にする。それが“森で暮らす”ということです。この高床式は、先端羽根付き鋼管杭という最先端材料を応用したデイトナハウスのオリジナル工法なのですが、耐震性、森との共生、更にデザイン性も同時成立させた“新しいカタチ”です。空中にふわりと浮かび上がることで、四角形の四辺が初めて意識にのぼり、その時、その縦横比率が美観と関係します。いわゆるプロポーションです。傾斜のある敷地でも、土地の形質をRCの擁壁で変質させることなく、土地に寄り添うように建築する。この“作法”を成立させながら、大きく張り出した木製デッキ部分も含めてプロポーションを整える。高度なミッドセンチュリーの技法を成立させています。
開放性とプライバシーの両立
とはいえ、内から外の森がクリアに見えるだけでは、プライバシーが確保できません。そこで、ドイツ製の電動外部ブラインド『ヴァレーマ』を装着しています。ブラインドの羽の角度の調整で、外部環境への開放度合いは自由自在に選択できるのです。
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“リマスター”という作法
わきまえと満足感の両立デザイン=モノのカタチという意味では、古今東西いろんなカタチはすでに出そろっています。カタチの新しさを無理やりに追求せず、過去の最も均整の取れた習作のエッセンスを現代の技術と手法で再現する。それは“昇華”ともいえるさらなる高みであり、“リマスター”と呼ばれる概念です。自然に対しても、過去の文化遺産/先人の営為に対しても、謙虚なわきまえを大切にしつつ、永い年月、愛着が持続するような建築。デイトナハウスの軽井沢リゾートハウスはその境地へのチャレンジとして位置づけられているのです。
DETAILSEXTERIOR
DETAILSINTERIOR
DETAILSOTHERS
HEATERS
暖房設備には、PS社のラジエター式の温水暖房を採用しています。ガラスの大開口の各所には、ペリメーターヒーティング。冬季には、窓面の負荷を熱の対流で除去します。これも開放性と居住性の両立をデザイン的に処理した逸品です。大谷石の面には大判のパネルヒーターを設置。
BATHROOM
バスルームもユニットバスながら、最上級のガラス張り仕様です。断熱を十分施した暖かい浴室。『PS』社のタオルウォーマーが余分な水分を乾燥させ、湿気やカビとも無縁の清潔感を大切にしているのです。脱衣室の床のココヤシマットも足にうれしい仕様です。
WINDOW SASH
大きなガラスのフィックス窓は、アルミサッシではフレームが太くなり、シャープさを演出できません。そこでオリジナリティを追求するため、独自のスチールサッシを採用。このスチールサッシは他の骨格同様に、アングル枠と押し縁をパウダーコーティングしているのも特徴で、耐久性を担保しつつ、鉄本来の質感を活かしています。