自然に開放する作法が
ミッドセンチュリーの神髄
Photo/Julius Shulman
ミッドセンチュリーデザインと言えば、家具の話がおなじみです。第二次大戦後の1945年~1960年にかけて、戦後の混乱期に世界で唯一温存されたアメリカの工業力を背景に新時代のデザイン要素を加えた新しい潮流。デザインの一般化、工業化を画期するムーブメントという風に捉えられています。結局家具の分野では、デザイナーの名前がブランドになって、工業化というよりは作家性の商品化の様相を呈しました。
建築の分野でも戦後のベビーブーム対策、復興対策としての工業化住宅への要請がありました。建築でのミッドセンチュリーデザインを象徴する一連の建築群は、何と言っても『ケーススタディハウス』です。これは単独の建築ではなく、『アーツアンドアーキテクチャー』という美術雑誌の誌上で掲載された一連の建築群の名称なのです。シリーズはNo28まで続き、建築は主にロサンゼルスを舞台としていました。面白いのはここからです。「住宅不足対策」、「工業化住宅」という言葉で連想するのは、殺風景な大量生産住宅ですが、ケーススタディハウスの建築群はどれも素晴らしい作品となり、いまでも大切にされ保存されています。それは何故か? ポイントはシリーズ共通のテーマとして感じ取れる“外部の自然への開放感”なのです。確かに課題は“ポスト&ビーム”。つまり柱と梁で構成された軸組み住宅で、それまでの西洋建築の主流であるレンガ造りとは一線画したものです。必然的に開放的にはなるかもしれません。
とは言え、ケーススタディハウスの建築群の底流にあるものは、工業化という言葉のイメージとはかけ離れた“瑞々しさ”です。極端に言えば自然が建築を美しくしているのです。結果的にはケーススタディハウスは何人かの建築家の名前を有名にし、作家性と共に後世に語られるようになりました。しかし建築家たちが“規格化”、“柱と梁の軸組構造”をテーマとしたとき、彼等が想起したのは日本の建築でした。人間の間尺を基準とした畳を基本単位とするモジュールシステム。これが日本の在来木造です。しかも詠み人知らず。作家性を超越したシステム建築で桂離宮でさえ設計者は明らかではありません(庭師はわかっているが)。そして何よりも、自然を敵対物とみなすのではなく(西洋建築のように)、自らを外部の自然に開いていく。自然の恩恵を上手なフィルター(障子、縁側、すだれ等々)を通してありがたく受け取る姿勢を建築空間の中に取り込んでいたのです。
代表的な建築のイームズハウスのリビングには、こけしをはじめとした日本の民芸品が所狭しと並んでいます。“民藝”。それはまさに詠み人知らずの魅力なのです。
モジュールのシステムを洗練させて、美しい規格住宅を考える。そして何よりも外部の自然に対して開放することで、建築や内部空間を瑞々しいものにしていく。それがデイトナハウス×LDKが、TYPE-Fという商品を通じて表現したいことなのです。TYPE-Fはその意味で、ケーススタディハウスという“素晴らしい試み”へのオマージュなのです。
イームズハウスは鉄骨システム建築を知る宝庫
雑然とものが置いてあるのに、絶妙に均整がとれているリビングルームに、生活の美しさや楽しさというテーマが凝縮されています。ガラスの向こうには豊かな木々の緑。棚には詠み人知らずの日本の民芸品が並んでいます。デイトナハウス×LDKの原点は、この写真への感動からスタートしたと言っても過言ではないのです。